ECサイトのファネル分析とは?離脱ポイントの見つけ方
ECサイトのファネルの基本、各段階で見るべき指標、購入完了前に顧客が離脱するポイントの見つけ方をわかりやすく解説します。
目次
トラフィックが多いだけでは、売上は伸びません。広告、SEO、メール、SNS、紹介などで訪問者を集めていても、注文につながらないECサイトは少なくありません。
本当の課題は、見込み顧客がどこで先に進まなくなるのかを把握することです。商品を見る前に離脱する人もいれば、商品を比較してもカートに入れない人もいます。チェックアウトまで進んでも、注文完了前に購入をやめてしまう人もいます。
ECファネルを使うと、顧客がブランドを初めて知ってから購入を完了し、理想的には再訪して再購入するまで、ストア内をどう進んでいくのかを把握できます。
この記事では、ECファネルの基本をわかりやすく説明し、各段階で重要な指標と、購入前に顧客がどこで離脱しているかを見つける方法を解説します。
ECファネルとは?
ECファネルとは、オンラインストアにおける顧客行動をシンプルに捉えたモデルです。ユーザーがブランドを初めて知ってから購入を完了し、理想的には再び戻ってくるまでの流れを示します。
一般的なECファネルは、次の5段階で表せます。
認知 → 興味・関心 → 比較検討 → 購入 → ロイヤルティ
各段階は、顧客の購買意欲の強さの違いを表しています。
たとえば、次のように考えられます。
- 認知:Google、SNS、広告、口コミなどを通じてユーザーがストアを知る
- 興味・関心:サイトを訪れ、商品やカテゴリを見始める
- 比較検討:商品を比較し、レビューや配送情報を確認し、自分に合うかを判断する
- 購入:商品をカートに入れ、チェックアウトを開始し、注文を完了する
- ロイヤルティ:再購入したり、レビューを書いたり、他の人にストアを勧めたりする
すべての訪問者が最後の段階まで進むわけではありません。それ自体は自然なことです。ファネル分析の目的は、全員にすぐ購入してもらうことではありません。ユーザーがどこで興味、安心感、購入意欲を失っているのか、そして何が離脱の原因になっているのかを理解することです。
なぜECファネルが重要なのか
売上は、ひとつの場所だけで失われるとは限りません。購買プロセスの段階ごとに、異なる問題が発生します。
たとえば、
- すぐ離脱するユーザーが多いなら、流入の質やランディングページとのミスマッチが原因かもしれません
- 閲覧はされるのにカート追加されないなら、商品ページのわかりやすさに課題があるかもしれません
- カート追加はされるのに購入完了しないなら、価格、送料、信頼性、決済手段に問題がある可能性があります
- 一度は購入されても再訪されないなら、購入後体験やリテンションに課題があるかもしれません
重要なのは、間違った段階を改善しても成果につながらないことがある、という点です。
ファネルを見れば、勘に頼る必要がなくなります。「売上が低い」という曖昧な問題を、より明確に診断できるようになります。
ECファネルの各段階を解説
1. 認知
認知は、見込み顧客が初めてストアやブランドを知る段階です。
流入経路としては、次のようなものがあります。
- 自然検索
- 有料広告
- SNS
- メールキャンペーン
- 紹介
- マーケットプレイス
- インフルエンサー施策
この段階では、すべての訪問者が同じ意図を持っているわけではありません。特定の商品を検索して来た人は、何となくSNS投稿をクリックした人より、通常は購入に近い状態です。だからこそ、流入の質が重要になります。
確認したい指標
- セッション数
- 流入元
- 表示回数
- クリック率
- 直帰率
- 新規ユーザーとリピーターの比率
この段階でわかること
トラフィックは増えているのにすぐ離脱される場合は、流入の質、訴求メッセージの弱さ、ランディングページとのミスマッチ、ページ表示速度などに問題がある可能性があります。
2. 興味・関心
興味・関心の段階は、ユーザーがストア内を見始めたところから始まります。
たとえば、次のようなページを閲覧します。
- 商品ページ
- カテゴリページ
- コレクションページ
- 検索結果
- フィルター
- ナビゲーションメニュー
この段階では、訪問者が何を売っているのかを理解できているか、そして閲覧を続けたくなるだけの関連性のある商品を見つけられているかがわかります。
確認したい指標
- 商品ページ閲覧数
- コレクションページでのエンゲージメント
- サイト内検索の利用状況
- 商品ページへのクリック数
- ページ滞在時間
- 1セッションあたりの閲覧ページ数
この段階でわかること
訪問者は多いのに商品ページまで進む人が少ない場合は、ナビゲーション、ランディングページのわかりやすさ、商品発見性、あるいは流入ユーザーの意図に問題があるかもしれません。次に何をすべきか、どこへ進めばよいか、なぜ閲覧を続けるべきかが伝わっていない可能性があります。
3. 比較検討
比較検討は、ユーザーがその商品が自分に合っているかを見極める段階です。
主に確認されるのは、
- 商品画像
- 商品説明
- 価格
- バリエーション
- 配送情報
- 返品ポリシー
- レビュー
- 信頼性を示す要素
- 商品詳細
興味を持たれたからといって、そのまま購入意欲につながるとは限りません。ページ上で重要な疑問が解消されなければ、商品が気に入っていても迷いは残ります。
確認したい指標
- 商品ページ滞在時間
- バリエーション選択率
- カート追加率
- レビューの閲覧・反応
この段階でわかること
商品ページの閲覧数は多いのにカート追加率が低い場合、ユーザーは次の一歩を踏み出すだけの安心感を持てていない可能性があります。
よくある原因は、
- 商品の価値が伝わりにくい
- 配送情報が不足している
- レビューがない
- 返品ポリシーが見つけにくい
- CTAの視認性が低い
- 信頼感が不足している
優れた商品ページは、迷いを減らし、顧客が安心して購入に進める状態をつくります。商品ページ最適化ガイドでは、この判断に影響する要素の改善方法を詳しく紹介しています →
4. 購入
購入は、顧客の意欲が実際の取引に変わる段階です。
ここには、次の行動が含まれます。
- 商品をカートに入れる
- 合計金額を確認する
- 配送方法を選ぶ
- 支払い方法を選ぶ
- 注文を完了する
この段階では、顧客は購入直前まで来ていますが、手続きがわかりにくい、リスクを感じる、面倒だと感じる場合には離脱することがあります。
確認したい指標
- カート追加率
- カゴ落ち率
- チェックアウト開始率
- チェックアウト完了率
- コンバージョン率
- 平均注文額
- 訪問者あたり売上
この段階でわかること
商品はカートに入るのに購入完了しない場合、原因はたいていカートやチェックアウトの体験にあります。
主な問題としては、
- 想定外の追加費用
- 配送情報がわかりにくい
- 会員登録の強制
- 支払い方法が少ない
- チェックアウト時のエラー
- モバイルで使いにくい
この段階の目標は、購入完了までの流れをシンプルで、安全かつ予測しやすいものにすることです。 ここで離脱が多い場合は、まずカゴ落ちやチェックアウトで迷いが生じる主な原因を確認してみてください →
5. ロイヤルティ
ECファネルは、最初の購入で終わりではありません。一度購入した顧客は、再訪して再購入したり、レビューを書いたり、ストアを他の人に勧めたりして、長期的な売上成長に貢献してくれる可能性があります。
この段階には、次のような要素が含まれます。
- 購入後のコミュニケーション
- 配送体験
- カスタマーサポート
- レビュー依頼
- ロイヤルティプログラム
- 商品レコメンド
- 再購入促進キャンペーン
- 紹介施策
確認したい指標
- リピート購入率
- 顧客生涯価値
- レビュー投稿率
- 返金・キャンセル率
- メールエンゲージメント
- 紹介率
この段階でわかること
一度購入した顧客が戻ってこない場合、原因として考えられるのは、
- 商品満足度
- 配送体験
- カスタマーサポート
- フォローアップ不足
- 再購入する理由がない
ロイヤルティが重要なのは、新規顧客を獲得し続けるよりも、既存顧客の再購入のほうが費用対効果が高いことが多いからです。強いファネルは、訪問者を購入者に変えるだけでなく、初回購入者をリピーターへと育てます。
顧客がどこで離脱しているかを見つける方法
顧客がどこで離脱しているかを特定するには、各ファネル段階をひとつ前の段階と比較します。
全体のコンバージョン率だけを見るのではなく、次のように考えてみてください。
- 認知から興味・関心へ進む訪問者はどれくらいいるか?
- 商品を見た人のうち、どれくらいがカートに追加しているか?
- カートのうち、どれくらいが購入完了につながっているか?
- 初回注文後に再訪する顧客はどれくらいいるか?
見るべきなのは、各ステップ間で最も大きく落ちている箇所です。
離脱の読み解き方
- トラフィックは多いのに商品ページ閲覧が少ない
ランディングページ、ナビゲーション、または流入の質に問題がある可能性があります。何を売っているのか、次にどこへ進めばよいのかがすぐに伝わっていないのかもしれません。 - 商品閲覧は多いのにカート追加率が低い
商品ページのわかりやすさ、商品画像、価格、CTAの視認性、信頼性、オファーの強さに課題があるケースが多いです。興味は持たれていても、行動するだけの安心感が足りないのかもしれません。ここが最大の離脱ポイントなら、ファネル全体を変える前に、まずなぜ「カートに追加」がクリックされないのかを確認しましょう。 - カート追加は多いのにチェックアウト完了が少ない
カートUXの問題、想定外の費用、配送情報の不明瞭さ、決済への不安、チェックアウトの複雑さなどが考えられます。 - 購入率は高いのにリピート購入が少ない
購入後のコミュニケーションの弱さ、配送体験の悪さ、商品満足度の低さ、ロイヤルティ施策不足などが原因かもしれません。 - モバイルの離脱率がデスクトップよりかなり高い
表示速度、余白設計、フォームの使いにくさ、CTAの見つけにくさ、モバイルでのチェックアウトの問題などが疑われます。
大切なのは、何を直すかを決める前に、症状と段階を正しく結びつけることです。
ECファネルで特に重要な指標は?
考えられる数字をすべて追う必要はありません。まずは、ファネル内での移動を説明できる指標から見ていきましょう。
- コンバージョン率
コンバージョン率は有用ですが、問題がどこで起きているかまではわかりません。そのため、単独のスコアとしてではなく、必ず文脈の中で分析する必要があります。この点は、ECサイトのコンバージョン率に関する記事で詳しく解説しています → - カート追加率
カート追加率は、商品を見たユーザーのうち何人が商品をカートに入れたかを示します。低い場合は、商品ページ、オファー、CTA、信頼性に問題があることが多いです。 - カゴ落ち率
カゴ落ち率は、商品をカートに入れたものの購入しなかったユーザーの割合を示します。高い場合は、価格の想定外、送料への不安、信頼性の問題、チェックアウト関連の課題が考えられます。 - チェックアウト完了率
チェックアウト完了率は、チェックアウトを開始したユーザーのうち、実際に購入を完了した割合を示します。最終段階の問題を見つけるうえで、特に重要な指標です。 - 平均注文額
平均注文額は、1回の注文あたりに顧客がいくら使っているかを示します。コンバージョン率が低くても、注文額の高さで補えているかを把握するのに役立ちます。 - 訪問者あたり売上
訪問者あたり売上は、1人の訪問者が平均でどれだけの売上を生み出しているかを示します。流入の質、購買行動、注文額をまとめて見られるため、コンバージョン率単体より役立つことが多い指標です。 - リピート購入率
リピート購入率は、再購入のために戻ってくる顧客の割合を示します。ロイヤルティや長期的な成長を理解するうえで重要です。 - モバイルとデスクトップの比較
モバイルとデスクトップの比較を見ると、デバイスごとにユーザー行動がどう違うかがわかります。モバイル流入が多いのにモバイルのコンバージョンが弱い場合は、モバイルUXの改善が必要かもしれません。
ファネルデータには文脈が必要な理由
ファネルデータは有用ですが、文脈なしでは誤解を招くことがあります。離脱があるからといって、それだけで問題とは限りません。まだ購入の準備ができていない訪問者もいるからです。
判断する前に、次の切り口でデータを比較しましょう。
- デバイス
- 流入元
- 商品カテゴリ
- 国
- 新規ユーザーとリピーター
- 商品価格
- キャンペーンの種類
たとえば、有料SNS流入は、購買意欲の高い検索流入よりも気軽に閲覧される傾向があります。新規ユーザーは、リピーターよりも多くの安心材料を必要とするかもしれません。モバイルユーザーは、デスクトップユーザーより早く離脱することもあります。
ベンチマークは参考になりますが、自社ストアのデータの代わりにはなりません。
目指すべきなのは、他社のファネルを真似することではなく、自社のファネルを理解することです。
ファネル内で売上が落ちているときに確認すべきこと
やみくもに変更を加える前に、まずはこのチェックリストを確認してください。
1. 最大の離脱ポイントを見つける
- 最も多くのユーザーが離脱しているのはどの段階か?
- 問題は商品ページ前、カート、チェックアウト、再購入のどこで起きているか?
- その離脱は最近起きたものか、それとも継続的なものか?
2. 主要セグメントを比較する
- モバイルとデスクトップ
- 流入元
- 新規ユーザーとリピーター
- 商品カテゴリ
3. 商品情報と購入導線のわかりやすさを見直す
- 商品ページで顧客の疑問に答えられているか?
- 商品画像、配送、返品、価格は明確か?
- 「カートに追加」ボタンは見つけやすいか?
4. 信頼性とチェックアウトを確認する
- 意思決定のポイント付近に信頼性を示す要素が表示されているか?
- 送料は早い段階で表示されているか?
- 支払い方法は明確か?
- チェックアウトはシンプルでモバイル対応になっているか?
5. 初回購入の先まで見る
- 顧客は再購入しているか?
- 購入後の体験はわかりやすいか?
- 顧客が戻ってくる理由はあるか?
実践的な手順で進めたい場合は、60分CRO監査を実施すると、優先度の高い課題をより早く見つけやすくなります。
まとめ
ECファネルを使うと、事業者は勘に頼らずに状況を把握できます。「なぜ売上が低いのか?」ではなく、「顧客はどこで先に進まなくなっているのか?」という、より本質的な問いができるようになります。
売上低下の原因は、たいてい購買プロセスのどこか特定の段階にあります。流入の質、商品発見性、商品ページのわかりやすさ、カート体験、チェックアウト、モバイルUX、信頼性、ロイヤルティなどが関係している可能性があります。
最大の離脱ポイントを特定できれば、最も重要な改善に集中できます。これこそがファネル分析の価値です。曖昧な問題を、具体的なアクションに変えられます。
よくある質問
ECファネルとは何ですか?
ECファネルとは、顧客がストアを初めて知ってから購入し、理想的には再訪するまでの流れを示すモデルです。ユーザーがどこで前に進み、どこで離脱しているのかを把握するのに役立ちます。
ECファネルの主な段階は何ですか?
ECファネルの主な段階は、認知、興味・関心、比較検討、購入、ロイヤルティです。各段階は、顧客の購買意欲の異なるレベルを表しています。
顧客がどこで離脱しているかは、どう見つければよいですか?
各ファネル段階をひとつ前の段階と比較してください。商品を見ない訪問者、商品を見てもカートに入れないユーザー、チェックアウトを始めても購入完了しないユーザーなど、ステップ間で最も大きく落ちている箇所を探します。
ECファネルでは、どの指標を追うべきですか?
セッション数、商品ページ閲覧数、カート追加率、カゴ落ち率、チェックアウト完了率、コンバージョン率、平均注文額、訪問者あたり売上、リピート購入率を追うとよいでしょう。
ECファネルとコンバージョン率の違いは何ですか?
コンバージョン率は最終結果を示す指標であり、ECファネルはその結果に至るまでの過程を示します。ファネル分析を行うことで、顧客がどこで、なぜ先に進まなくなるのかを理解できます。
ECファネルはどう改善すればよいですか?
まず、最も大きな離脱が起きている段階を特定します。そのうえで、流入の質、商品ページ、カート体験、チェックアウト、モバイルUX、信頼性、リテンションなど、該当する部分から優先的に改善していきましょう。